擁壁第4回:高速道路やバイパスも実は「工場製」!? ― プレキャスト擁壁が結局一番お値打ちになる理由
【結論】
「工場で作られたL形擁壁(プレキャスト)」は、一見すると贅沢品のように思えるかもしれませんが、実はトータルの費用が一番安く抑えられる「優等生」です。私たちの身近にある新名神高速道路やバイパスの工事でも大活躍しているこの技術は、職人さんの人件費や工事の日数をゴソッと削ることができるため、現代の家づくりにおいて、最も賢くお金を使える選択肢(ベストプラン)になります。
- 三重の「新名神」やバイパスが、現場ではなく「工場」を選ぶ理由
「工場で作るコンクリートなんて、本当に大丈夫?」と思われるかもしれません。そんなときは、私たちがいつもお世話になっている「新名神高速道路」や「国道のバイパス道路」を思い浮かべてみてください。
毎日、何万台もの大型トラックが猛スピードで行き交うあの巨大なコンクリート構造物、実はその多くが「工場で作られたプレキャスト製品」を現場で組み立てて作られています。
実は、新名神の三重県区間(四日市〜亀山)を作るとき、国はとてつもない大作戦を実行しました。なんと、今の「鈴鹿パーキングエリア(PA)」になる広い敷地を、工事期間中だけ丸ごと「最新鋭のコンクリート製品工場」に変身させたのです。
なぜそこまでして工場製にこだわるのか。それは、現場では絶対に真似できない「異次元の強さと精度」をコンクリートに与えることができるからです。
- コンクリートを鋼鉄のように鍛え上げる「2つの秘密」
工場の設備でしかできない、プレキャスト擁壁の圧倒的な強みの秘密がここにあります。
① 究極のスパルタ温室「オートクレーブ養生」
用語解説【オートクレーブ養生(ようじょう)】:
特殊な圧力釜を使い、高温(約180℃)かつ高圧(約10気圧)の蒸気でコンクリートを蒸し上げる、最先端の「超急速硬化技術」です。
普通のコンクリートは固まるまでに何日もかかりますが、このオートクレーブ養生を行うと、セメントと石の成分が化学反応を爆発的に起こし、わずか1日でお寺の石垣をも超える圧倒的な硬さと耐久性を手に入れます。水も空気も一切通さないほどギッシリ密に固まるため、寿命は100年を軽く超えると言われています。
② 現場打ちでは絶対に不可能な「ミリ単位の製品精度」
現場でお肉を測って切るのと、工場で機械を使って精密にカットするのでは、正確さが違いますよね。
工場の擁壁は、狂いのない鋼鉄製の型枠を使い、ロボットや精密機械によってミリ単位の正確さで作られます。
- 現場打ちは「数センチのズレ」が日常茶飯事:外の天気や職人さんの体調によって、厚みが変わったり鉄筋の位置がズレたりするリスクがあります。
- 工場製は「完璧な均一さ」:鉄筋がコンクリートのちょうど真ん中に、完璧な深さ(かぶり厚さ)で入っていることがミリ単位で保証されています。この「ズレがないこと」こそが、将来のひび割れや崩壊を防ぐ一番のガードレールになります。
- 「材料の値段」だけで比較してはいけない理由
見積書を見るときに、多くの人が「コンクリートの材料代」だけで比べてしまいます。しかし、そこには大きな落とし穴があります。
- 現場打ちコンクリートの「隠れた人件費」:
斜面に型枠を組み、鉄筋をジャングルジムのように組み立て、生コン車を呼んでコンクリートを流し込む……。現場打ちの擁壁は、何人もの熟練した職人さんが何日も現場に張り付く必要があります。つまり、費用の大半が「職人さんの人件費」なのです。
- プレキャストは「クレーンで置くだけ」:
工場で作られた完成品の擁壁をトラックで運び、クレーン車でガチャン、ガチャンと並べていきます。職人さんの人数も少なくて済み、現場での作業時間が劇的に短縮されます。
現代は職人さんの人件費(労務費)がとても高くなっているため、「職人さんの作業時間をいかに短縮するか」が、工事費を安く抑える最大のポイントになります。
- 「工事の日数(工期)」を比べると一目瞭然
家づくり全体のスケジュール(トータルコスト)で見ても、プレキャストのスピード感は圧倒的です。
| 工事のステップ | 現場打ちコンクリート(約2週間〜) | 工場製品:プレキャスト(約2〜3日) |
| ステップ1 | 土を掘る、基礎を作る | 土を掘る、基礎を作る(同じ) |
| ステップ2 | 鉄筋を組み、型枠を立てる(数日) | 工場から届いた壁を並べる(1日) |
| ステップ3 | 生コンを流し込む(1日) | ーーー |
| ステップ4 | 固まるまでじっと待つ(約1週間) | すぐに土を埋め戻せる(1日) |
現場打ちの場合、コンクリートが「カチカチに固まるまでの待ち時間」が必要ですが、プレキャストは工場ですでに完全に固まった状態で届くため、並べたその日から次の工事に進めます。
工事期間が短くなるということは、それだけ現場の管理費や、お引越しまでの仮住まいの家賃などを節約できるということでもあるのです。
- 一級建築士からの「お金のアドバイス」
ただし、プレキャスト擁壁にも一つだけ弱点があります。それは「大型トラックやクレーン車が入るスペースがない狭い場所」では使えないということです。
当事務所では、土地を購入される前に、
- この道路の幅なら、プレキャスト擁壁を運んでこられるか(搬入ルートの確認)
- 現場打ちにするしかない場合、どうやって人件費を削る工夫をするか
を、あらかじめ戦略的にシミュレーションします。
結論
プレキャストのL形擁壁は、オートクレーブ養生やミリ単位の精度といった「最高峰の品質」を持っているだけでなく、現代の建築コストの仕組みに最もマッチした「一番お値打ちな選択肢」です。
ハウスメーカーから「擁壁工事で〇百万円かかります」と言われたら、まずはその中身が「現場打ち」になっていないか確認してください。私たちは、知恵と最新の工法を使って、あなたの予算を1円も無駄にしないプロのコスト管理をお約束します。
全4回(+特別回)の連載の終わりに(一級建築士の独り言)
「地面の下のコンクリートの話」なんて、普段は誰も気に留めないかもしれません。でも、そこにお金をかけるか、知恵を絞るかで、我が家の安全性と資産価値は天と地ほど変わります。
耳の痛いこともズバズバと言いますが、それもすべて、皆様に「絶対に後悔してほしくない」という建築士としての誇りがあるからです。いつでも皆様の「参謀」として、事務所でお待ちしております。
「検討中の土地でプレキャスト擁壁が使えるか知りたい」「見積もりの金額が適正か見てほしい」という方は、ぜひ見積書を持って当事務所へお越しください。忖度なしに、徹底的にコスト診断いたします。