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その暑さ対策、実は周辺を暑くしていませんか? 建築家が考える「熱を遠くへ捨てる」発想

その暑さ対策、実は周辺を暑くしていませんか? 建築家が考える「熱を遠くへ捨てる」発想

気象庁のデータによれば、都市部における気温の上昇は地球温暖化に加え、都市化による「ヒートアイランド現象」が大きく影響しています。ヒートアイランド(熱の島)とは、アスファルトやコンクリートの増加による「土地利用の変化」と、エアコンや自動車などによる「人工排熱」によって、都市が周囲よりも高温になる現象です。

現在、この対策として屋上緑化や壁面緑化が進められていますが、もう一つの大きな要因である「人工排熱」については、根本的な対策が遅れています。国交省は「風の道」を活用して熱を吹き飛ばす都市づくりを提唱していますが、果たしてそれだけで十分でしょうか。

問題の本質は、私たちが室内を冷やすためにエアコンの室外機から熱を吐き出し、自動車のエンジンからマフラーを通じて熱を排出するなど、「熱をすぐ外に排出していること」にあります。建物の暑さ対策として主流の「遮熱(※1)」も同様です。遮熱塗料などで強烈な太陽熱を跳ね返せば建物の内部は守られますが、反射された熱は周辺の空間に拡散されるだけで、ヒートアイランド現象の解決にはなっていません。

「発生した熱を、その場ではなく遠くに持って行って捨てる」。これこそが、真のヒートアイランド対策だと私は考えます。今回はそのための最新技術とアプローチを2つ紹介します。

1. 宇宙へ熱を逃がす「放射冷却技術」
昨年の大阪万博でも注目された「SPACECOOL(スペースクール)」という画期的な新素材があります。これは、太陽光からの熱を反射するだけでなく、吸収した熱を「大気の窓(※2)」と呼ばれる波長域の赤外線に変換し、大気圏外(宇宙空間)に直接放射するという技術です。
非電化工房の藤村靖之氏が提唱する「非電化冷蔵庫」のように、電気を使わず夜間に熱を逃がす放射冷却は以前からありましたが、昼間直射日光下でも放射冷却を可能にした点が非常に革新的です。熱を周辺にばらまくのではなく、宇宙という究極の「遠く」へ捨てる。これが今後の都市環境を救うカギになるかもしれません。

2. 海や地中へ熱を逃がすインフラ活用

エアコン室外機からの排熱を遠くへ運ぶ方法として、未利用熱源(海水・河川水・下水道処理水など)を利用する「地域冷暖房(DHC)」があります。横浜のみなとみらい地区などで導入されており、ビル群の熱を水に回収して海などに逃がす仕組みです。ただし、内陸部では配管インフラの建設費が膨大になり、排熱による水温上昇が生態系へ影響を与える懸念もあります。

そこで私が注目しているのが「地中熱ヒートポンプ(※3)」です。熱を空気中ではなく、地中深く循環させる配管に捨てる(または地中の熱を利用する)方法です。海外では採用例が多く、新築時に杭工事と併用すれば導入のハードルは下がります。初期投資(イニシャルコスト)はかかりますが、長期的なライフサイクルコスト(LCC)や環境負荷低減の観点から見れば、十分に検討に値するシステムです。地下水系への影響等、調査や技術開発がさらに進むことを期待しています。

熱の捨て方を変えることは、これからの建築と都市計画において避けては通れない課題です。

その他に「時間差を利用した排熱」というアプローチもありますが、それについては次回のコラムで改めて考察したいと思います。

【専門用語の解説(※読者向けにコラム末尾に記載するか、本文の理解の補助として活用してください)】
• ※1 遮熱(しゃねつ): 太陽光(特に赤外線)を反射し、建物などの内部へ熱が伝わるのを防ぐこと。遮断するわけではなく「反射」するため、反射した先の温度は上がる。

• ※2 大気の窓: 地球を覆う大気(水蒸気や二酸化炭素など)に吸収されず、宇宙空間までまっすぐ通り抜けることができる特定の赤外線の波長帯(8~13マイクロメートル付近)のこと。

• ※3 地中熱ヒートポンプ: 年間を通じて温度が一定(15℃前後)である地中の特性を活かし、夏は空気中の熱を地中へ捨て、冬は地中の熱を汲み上げて空調に利用するシステム。